AKAI S950というサンプラーをご存知でしょうか?1988年にAkaiが発表したラックタイプのサンプラーです。

HIPHOPなどを作る人にとってはこのS950はとてもスペシャルな機材の一つです。モノラルで12bit、メモリを増設していない状態だとサンプリングタイムはたった10秒程度。

現代の機材としては非常にロースペックな機材ですが、この機材がスペシャルである理由はいろいろとあります。

例えば、かのピート・ロックが「ベースラインはS950でフィルターをかけた音色を使っている」と言っていたり、また多くのHIPHOPのビートメイカーがS950に内蔵されているサイン波の音色をベースラインに利用していたり・・・。

AkaiといえばMPCシリーズが有名では有りますが、MPCシリーズ以外で濃い存在感を発しているサンプラー、それが「S950」では無いかと思います。

さて、このたび「Mathieu Demange」というメーカーがなんと「S950のAD/DAとフィルターを再現したその名もRX950」というソフトウェアプラグインを発売致しました!

S950をかれこれ20年間手放さずに持っている私としては超気になります!ということでゲット!

お値段たったの19€です!いま時点で「2,442円」ですね。

さて、気になるその音質はどんな感じでしょうか?RX950をレビューしていきたいと思います!

そもそもRX950とは?

RX950はそもそも「サンプラー」ではなく「S950のフィルターとAD/DAコンバーターをシュミレートしたもの」ですので、サンプラーのプラグインでは有りません。

あくまで「S950に音質を似せる為のエフェクター」だと思ってください。サンプラーのプラグインを買ったつもりでは絶対に買ってはいけませんよ!

そもそもS950のフィルターは独特で、正確には「フィルターではなくギターのトーン回路の様なもの」という話を聞いたことが有ります。

他のAkaiのサンプラーのフィルターとはちょっとことなった質感に感じます。

このRX950はあくまで「S950に似たサウンドを出すためのプラグイン」です。むっちゃニッチですがそういうコンセプト大好きです。

RX950の音質は?S950と似ている?

まず、RX950の音がS950と同じかどうか。それについては「違います」と答えたいですね。ただ、非常によく似たサウンドになっています。特徴は非常によく捉えていると思います。

しかし、やはり実機と同じかというと多少は違う気がしますね。フィルターの感じはすごく似ているのですが、AD/DAに関しては「そっくりじゃん!」とまでは思いませんでした。

他の実機シュミレート系でも同様なのですが、やはり「実機・ハード機」と同じ音がするかというと同じではありません。

しかし、かなり特徴は捉えているので「使えるプラグイン」である事は間違いありませんね。

なんだか実機にくらべて若干ディティールがベタつくというか、味付けが濃いというか、実機の方がもっとスムースな出音な気がします。

なんだかんだ「Akaiサンプラー」って独特です。その独特さはなんといえば良いのでしょうか。さらっとした所がある音質なんです。

そこをきちんと再現出来ているかどうかというとちょっと微妙です。

しかし、ハード機のシュミレーションがかなりハイレベルなのは「ユニバーサルオーディオ」くらいのものです。

そういった背景からするとここまで似ていれば必要十分という事で星5つです!

あと、ハード機は案外DAWに取り込んでしまうと印象が変わったりします。そういったところを考慮すると全然問題ないでしょう。

さらに言うと「別にS950に似ていようが似ていまいが俺はこの音好きだぜ!」と言う人はたくさんいると思います。

自分もRX950に特に不満はありません。

RX950のパラメーター

RX950のパラメーターですが、この手のプラグインからすると結構珍しいパラメーターになっています。

INPUT

まずはインプットのつまみです。インプットのゲインを上げると如実に音質が変わります。

ただ音が大きくなるのではなくて、S950でのサンプリング時にインプットのボリュームを上げた時の挙動に「似ている」ということです。

ただの音量調節ツマミでは無く「質感のコントロール」が出来るということです。ちなみにインプットゲインを上げるとローとミッドが若干パワフルになり、暑苦しい雰囲気になっていきます。

音量を下げたいときは「アウトプット」の方を下げましょう。よくNeve1073なんかで言われる「インプットゲインを突っ込んで、アウトプットを下げる」みたいな利用が出来るということです。

AUDIO BANDWIDTH

これはなんて言えば良いのでしょうか。初段のフィルターって感じでしょうか。こちらのツマミを左にひねると音がモコモコしていきます。ローパスフィルターです。

右側にも「Filter」というツマミが有るのですが、右のツマミとこちらのフィルターは効きが違います。

そもそもS950にはフィルターは一つしか有りません。ここは大きな違いです。

こちらの「AUDIO BANDWIDTH」は19200hzから3000hzまでのローパスフィルターですね。

耳に刺さる「痛い高域」をカットしたい、という用途であればこちらのフィルターを利用するのが便利です。

そしてやっぱり質感はなんだかS950に無茶苦茶似ている音質です。

なんか、実機よりもシビアに帯域を狙いやすい事もあって、地味にこの「フィルター2つ」の考え方は便利な気がします。

FILTER

前述の「AUDIO BANDWIDTH」に比べると、もっと音をモコモコに出来ます。

フィルターを最大にまわし、アナライザーで見てみるとだいたい600~500hz付近でカットしている様でした。

こちらは単純に「モッコモコに出来るローパスフィルター」と思っておけばOKでしょう。

OUTPUT

こちらは単純に出力ボリュームを上げ下げするものです。INPUTを上げたらOUTPUTを下げる、という程度の用途で間違いないでしょう。

特に音質変化は見られません。

MONO

こちらをクリックするとステレオ音源をモノラルにする事が出来ます。ボタンのデザインが実機そっくりで憎い!

ちなみにS950はモノラルですので、本来でいえばこちらのボタンを押すことで実機さながらの質感が手に入ると考えるべきでしょうか。

RX950はステレオソースが利用可能!

S950で出来ないこと、それは「ステレオでのサンプリング」です。ステレオでサンプリングしたい場合はS950を二台購入する必要が有ります。

さて、RX950はVST、AU、AAXに対応するソフトウェアプラグインですのでもちろん「ステレオ」で利用が可能なんですね!

S950でステレオサンプリングしてみてー、と何度思ったか。

このRX950があれば簡単にその「S950ステレオ使い」の気分が味わえます。これだけでも買いですかね。なんせ2000円台で買えますから。

DAWでミックスしていて、例えば「ハード機のMPCにPCのソフトシンセをあわせる」といった場合、質感がバラつき過ぎてMIXが大変な事が有ります。

そういう時にこの「RX950」は大活躍です。ハイファイなシンセサウンドが、まるで古いサンプラーを通したかの様な質感へと変貌。

個人的に導入して最も素晴らしかったポイントはここですね。とにかくサンプラーベースで作った楽曲の「質感合わせ」が楽。

とくにソフトシンセなんかは非常にハイが強いというか、デジタル感の非常に強いサウンドが多いわけです。デジタル感に悩む事が多い人は是非にRX950の導入をオススメしたいです。

まとめ

RX950はめちゃくちゃS950に似たサウンドが手に入ります。いろいろな「昔のサンプラーの質感」をうたったプラグインや機能なんかもありますけれど、個人的にはいままでサウンドを聞いた中ではトップクラスです。

比較対象はBATTERYなんかについている「SP1200」「MPC60」なんかと比較すると、こちらはなんだかんだNIサウンドにしかならない様に感じます。

また、正統的には「AKAI MPC SOFTWARE」についているMPC60、MPC3000のシュミレーターが有りますが、あちらはなんだかんだ本家AKAIのものということで、AKAIサウンドでは有りましたが、MPC3000の実機を持っているのですが比較するとやはり「そっくり!」とは全く思えません。実機は10倍は凶暴なサウンドです。

そういった事を考えるとこの「RX950」はコンセプト的に大成功しているプラグインの一つです。

単純にローパスフィルター単体のプラグインとして考えても、妙に変なポイントにレゾナンスを感じるものや、なんだか妙に心地の悪い歪っぽい雰囲気のものも多いのですが、単純に「癖の少ないローパスフィルター」として好みにあう場合はドハマリ出来るのでは無いかと思います。

UIも実機に似せていてかわいいですし、何よりも安いのでAKAIサンプラーファンは手に入れて損は有りません。